今年も夏の全国高校野球選手権大会にも負けない、熱い戦いを見せてくれた「小学生の甲子園」高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント。好ゲーム目白押しの一方で、SNSでは学童選手たちの奮闘に水を差すような、心ないやり取りが続いており、心を痛めるばかりなのです。
祝・アジア一! 祝・日本一!
8月9日から15日に中国・杭州市で行われた「第12回 BFA U12アジア選手権」では、桑田真澄監督率いる「侍ジャパンU-12」が見事な全勝で、2度目の優勝を飾りました。おめでとうございます!
少し宣伝させていただけば、この侍ジャパンU-12の強化練習において、近く発売予定の、わがフィールドフォース製「フォースマシン・リアル」をお使いいただきました。このマシンは、ご好評いただいている「フォースマシン」FFMC-100Mの進化系で、ウレタン製の専用ボールではなく、軟式、硬式の実球を使えるようにしたものです。
こうした機材協力により、わずかでも選手たちの力になることができたのであれば、これほどうれしいことはありません。

一方、国内に目を向ければ、8月7日から13日の日程で“小学生の甲子園”「高円宮賜杯第46回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」が愛媛県で行われ、大阪の長曽根ストロングスがこれまでの最多記録を更新する前人未到、9度目の優勝を果たしました。こちらもおめでとうございます!
この全日本学童の決勝で長曽根と戦ったのは、滋賀・多賀少年野球クラブ。現在、日本の学童野球シーンをけん引する2チームによる頂上対決は、多くの学童野球ファン、関係者が待ち望んでいた一戦だと思います。そしてその期待を裏切らない、まさに息をのむような、1点を争うシビレる展開の戦いでした。
優勝した長曽根はもちろん、終始、互角な戦いを見せた多賀もたたえたい内容。学童野球に「世紀の一戦」があるのだとしたら、真っ先に挙げられる戦いになったのではないでしょうか。

好ゲームに影を落とす「変化球問題」
ところが、です。
そんな好ゲーム、さらには大会そのものに文句をつけるような意見が大会後、SNSで飛び交っています。
全日本学童大会において、学童野球では禁止されているはずの変化球が投げられていたではないか、というものです。
学童野球の変化球問題については以前、わが「学童野球メディア」の記者が、野球サイト「Full-Count」さんに寄稿させていただいています(→こちら)。
今年に入り、この「変化球問題」は学童野球界で大きな話題となっており、先の全日本学童大会でも、事前の監督・主将会議において、かなり長い時間を割いて禁止の徹底を説かれていたようです。
それにもかかわらず…という議論になっているわけです。
この議論に出口はあるのか!?

この話題について私見を述べさせていただくならば、「変化球の撲滅は不可能」だと考えています。
学童野球では、チェンジアップを含めた変化球の投球は禁じられていますが、「スローボール」を投げることは認められています。
速球とスローボールを同じ軌道で投げるのは不可能。まして、とくに学童野球のような低年齢層の野球では、ストレートを完全なる「真っすぐ」に投げられるピッチャーも少ないのではないでしょうか。
手が小さく、普段から薬指も含めた3本の指を縫い目にかけて投げている、という選手も珍しくありません。
そんな状況で「純然たるストレート」「スローボール」「少し変化する球」を見分けることはできるでしょうか。審判員がNGとする基準は「握りを変えているかどうか」ということのようですが、これも完全に「白」と「黒」を分けることは難しいはず。実際、現場では「結局、球筋で見分けるしかない」という意見も耳にします。
そんな中で、よりどころを見つけるとすれば、軟式野球のルールをまとめた「競技者必携」にある「投球が変化球かどうかは球審の判断による」ということに尽きるのではないでしょうか。
球審が「変化球」と判断すれば変化球、「変化球ではない」と判断すれば変化球ではない。それ以外の判断は存在しない、ということです。
この議論で一番、痛ましく感じるのは、当の選手たちの気持ちが置き去りにされていることです。大人たちの勝手な意見の応酬に、子どもたちを巻き込んでしまっていませんか? 特定の選手を傷つけてしまっていませんか?
ヒートアップしている大人たちにも、そこは立ち止まって考えてみてほしいのです。
いっそ、変化球を解禁しては?
さて、そんなことも踏まえたうえで、さらなる私見を披露するなら…。
いっそ、変化球を解禁してしまってはどうでしょうか?

冒頭に挙げた、侍ジャパンU-12の練習で「フォースマシン・リアル」をお使いいただいた理由は、ほかでもない、変化球対応の練習のためです。「変化球が投げられるマシンを」というリクエストで、フォースマシン・リアルが指名されたのです。
小学生世代のU-12であっても、国際大会では変化球が認められているのです。
国内でも、硬式のリトルリーグでは変化球は禁止されていません。
前出の「競技者必携」には、「関節の障害防止のため、まだ骨の未熟な学童部の投手は変化球を禁止する」とあります。
しかし実際のところ、専門家に見解を仰いでも、「変化球を投げると、ストレートより肩・肘への負担が大きくなる」という科学的エビデンスは存在しない、というのが現実のようです。
そうであれば、医科学的見地に基づいて現在の投球制限を見直した上で(現在よりも厳格な制限が必要にはなるでしょうが…)、定期的な検査を行うなどすれば、変化球を解禁しても、むしろ肩・肘の障害防止に対する意識は、今以上に高まるのではないでしょうか?
おそらく出口は存在しないため、誰の得にもならず、子どもたちが傷つくだけの「変化球」論争。それでも、もし、これをきっかけに子どもたちを肘・肩の障害から守ろうという機運が高まるのではあれば、ムダではなかった…となるかもしれません。
「変化球解禁論」、いかがでしょうか? 案外、現実的なアイデアだと思いませんか?